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2015年7月18日土曜日

PDCAサイクル@マネジメント

日本の製造業者はデミングの技法を広く適用し、これまでにない品質と生産性の向上を達成した。品質向上とそれに伴うコスト削減により、日本製品が世界を席捲することとなった。


デミング哲学の概要

W・エドワーズ・デミングの哲学(思想)をまとめると次のようになる。

「デミング博士は、マネジメントの適切な原則を採用することにより、組織は品質を向上させ、同時に(無駄、再作業、訴訟沙汰を減らし、顧客満足度を向上させることで)コストを削減できるとおっしゃった。鍵となるのは、継続的な改善を行い、製造業を断片の集まりではなくシステムとみなすことである」[14]

1970年代、デミング哲学は日本で次のように (a)対(b) の形でまとめられている。

(a)
品質を次のように定義したとき(Results of work efforts = 作業努力の結果、Total costs = 全体コスト)

組織やその構成員が品質向上を心がけるということは、コストを常に低下させることに他ならない。
(b)
しかし、コストを重視しすぎると、かえってコストの増大を招き、品質は低下する。


デミングは、経営者は彼が「深遠なる知識の体系」と呼ぶものを持つ必要があるとした。それは、次の4つからなる。

システムの理解(Appreciation of a system)- 供給業者、製造、顧客を含めたプロセス全体を理解する

ばらつきに関する知識(Knowledge of variation) - 品質のばらつきの範囲と原因を知るため、統計的標本化技法を利用する

知識の理論(Theory of knowledge) - 知識を説明する概念と知ることができる限界(認識論)

心理学に関する知識(Knowledge of psychology) - 人間性の概念

デミングは次のように述べている。「これら4つについて、理解し実践するのにその分野の最高権威である必要はない。マネジメントの14のポイントは、西洋のマネジメントスタイルの変革において、この知識の応用として産業界、教育、政府によって自然に適用されている。

「ここに挙げた深遠なる知識の体系の各部分は、別々に考えてはいけない。これらは相互に関連している。従って、心理学に関する知識は、ばらつきに関する知識なしでは不完全である。

「指導者は、人々に個性があることを理解しなければならない。それは何もランク付けするということではない。各人に組織内での役割があり貢献していることを理解するのがマネジメントの責任である」[15]

「システムの理解」は、システムの構成要素間の相互作用理解し、どのようにしてシステムが安定した状態に向かうのかを把握することである。個々の要素によらず、この安定した状態がどんなものであるかによって、システムの出力が決定される。つまりそれは、組織の構成員ではなく構造であり、出力の品質を向上させる鍵はそこにある。

「ばらつきに関する知識」は、測定可能なものには必ず標準的な分散と特殊原因による固有の問題があると理解することである。品質向上は、特殊原因を排除し、標準的な分散を制御することに他ならない。デミングは、標準的な分散に対して変革しようとすれば、システムの性能は低下するとした。この考え方がシックス・シグマへと繋がる。

深遠なる知識の体系は、次に挙げるマネジメントの14のポイントの基盤となっている。

デミングの14のポイント

デミングはビジネス効率を向上させるためのマネジメントの14の原則を提示した。要約すると次の通りである。

競争力を保つため、製品やサービスの向上を常に心がける環境を作る。最高経営者がその責任者を決める。

新しい哲学を採用する。我々は新たな経済時代にいる。遅延、間違い、材料の欠陥、作業の欠陥などの一般常識となっている水準には満足できない。

全品検査への依存を止める。品質は統計的手法で向上させる(完成後に欠陥を見つけるのではなく、欠陥を防止せよ)。

価格だけに基づいて業者を選定することを止める。価格と品質によって選定する。統計的手法に基づく品質保証のできない業者は排除していく。

問題を見逃さない。全体(設計、受け入れ材料、製造、保守、改良、トレーニング、監視、再教育)を継続的に向上させるのがマネジメントの役割である。




PDCAサイクルは、第二次大戦後に、品質管理を構築したウォルター・シューハート(Walter A. Shewhart)、エドワーズ・デミング(W. Edwards Deming)らによって提唱された。このため、シューハート・サイクル(Shewhart Cycle)またはデミング・サイクル(Deming Wheel)とも呼ばれる。

PDCAサイクルという名称は、サイクルを構成する次の4段階の頭文字をつなげたものである。

Plan (計画):従来の実績や将来の予測などをもとにして業務計画を作成する。
Do  (実施・実行):計画に沿って業務を行う。
Check(点検・評価):業務の実施が計画に沿っているかどうかを確認する。
Act (処置・改善):実施が計画に沿っていない部分を調べて処置をする。

この4段階を順次行って1周したら、最後のActを次のPDCAサイクルにつなげ、螺旋を描くように一周ごとにサイクルを向上(スパイラルアップ、spiral up)させて、継続的な業務改善をしていく。この考え方は、ISO 9001、ISO 14001、ISO 27001、JIS Q 15001などの管理システムや、ソフトウェア開発におけるスパイラルモデルを始めとする反復型開発などにも反映されている。

またビジネスシーンにおいては、このPDCAサイクルを生産工程だけでなく汎用化させ、「仕事の基本」を表すためにも用いることが多い。綿密に計画を立て、そのとおりに(軌道修正しながら)実践し、結果を評価し、改善し、次につなげるというサイクルは、過不足なく仕事の流れを簡潔にいい表している。特に新人教育などで事例を交えながら説明すると、仕事をどう進めるべきかが理解しやすい。


フォード・モーターは、アメリカ企業としては比較的初期にデミングに助言を求めていた。1981年、フォードはデミングに品質活動の改善を依頼した。フォードの売り上げは下落傾向にあり、1979年から1982年の間に30億ドルの損失を計上していた。デミングは企業風土と経営方針を尋ねた。フォードが驚いたのは、デミングが品質ではなく経営のことを語りだしたことである。彼は、よりよい自動車を開発するときの問題の85%はマネジメントの責任だとした。


1982年、デミングの本 Quality, Productivity, and Competitive Position が MIT Center for Advanced Engineering から出版された。これは、1986年に Out of the Crisis と改名されている。デミングはこの中でマネジメントの14のポイントと呼ばれる理論を述べている。マネジメントが将来計画を立案するのに失敗すると、それが市場での損失に繋がり、さらに従業員らの解雇に繋がる。マネジメントは、四半期配当によってだけでなく、ビジネスを継続し、投資を保護し、将来の配当を確実なものとし、製品とサービスの改善を通してより多くの仕事を提供する革新的な計画によって判断されなければならない。「新しい学習と新しい哲学への長期的関与は、変革を必要とするマネジメントに必須である。臆病者や敏速な結果を期待している人々は、最終的には失望することになる」





ウィリアム・エドワーズ・デミング(英: William Edwards Deming、1900年10月14日 - 1993年12月20日)は、アメリカ合衆国の統計学者、大学教授、著述家、講演者、コンサルタントである。第二次世界大戦時にアメリカの生産性向上に尽力したが、それよりも日本で行った業績でよく知られている。彼は1950年から日本の企業経営者に、設計/製品品質/製品検査/販売などを強化する方法を伝授していった[1]。彼が伝授した方法は、分散分析や仮説検定といった統計学的手法の応用などである。デミングは、日本がイノベーティブな高品質製品を製造し経済力を高めるのに多大な貢献をした。日本の製造業やビジネスに最も影響を与えた外国人であった。このため、日本では以前から英雄的な捉え方をされていたが、アメリカでの認知は彼が死去したころやっと広まり始めたところであった[2]。

概要

アイオワ州スーシティ生まれ。1921年、ワイオミング大学で電気工学の学士号を取得、1925年、コロラド大学ボルダー校で物理学と数学の修士号、1928年、イェール大学で物理学と数学の博士号を取得した。イェール大学在学中にベル研究所のインターンシップを獲得。卒業後、米農務省および国勢調査部門で働く。ダグラス・マッカーサー将軍の下で日本政府の国勢調査コンサルタントを務め、統計的プロセス管理手法を日本の企業経営者に教えた。その後も何度も日本に赴き、助言を与えると共に、ベル研究所でウォルター・A・シューハートから学んだ技法を適用した結果である経済成長の様子を観察した。後にニューヨーク大学の教授となり、同時に米政府の個人コンサルタントとなった。

デミングの著書 Out of the Crisis (1982–1986) と The New Economics for Industry, Government, Education (1993) では、彼の理論である Profound Knowledge™ とマネジメントの14のポイントが示されている(後述)。フルートとドラム演奏を趣味とし、作曲や編曲も行った[3]。

1993年、ワシントンD.C.に W. Edwards Deming Institute を設立。また、アメリカ議会図書館にはデミングコレクションが収蔵されており、多数の音声テープとビデオテープも含まれている。W. Edwards Deming Institute の目的は Profound Knowledge™ の産業への適用の研究による繁栄と平和の追求である[4]。

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